パルテミラ~砂漠の妖精帝国~

 

大ローマ帝国が最盛期を迎えていた時代。その西、砂漠を越えた先には、女系の帝国パルテミラがあった。男人禁制の帝都テシオンには、魔法から生まれた少年の姿の生命――幼精と女たちがともに暮らし、独特な文化を育んでいた。

ローマ属州スパルタクスの将軍――ベテルギウスは、将来を見込まれてパルテミラへの遠征軍に加わった。地中海で無敵を誇ったローマ軍の勝利は間違いないと思われたが……

異国に恋した将軍が綴る物語――神秘と哀愁漂うオリエンタル・ファンタジー

 

用語集

【国名】・パルテミラ帝国《ていこく》 大ローマ帝国の遥か東にある女帝が治める大国。大陸の東西を結ぶ絹の道に跨り、ペルシス人とトラキヤ人を中心とした多様な民族が暮らしている。帝都は東西貿易で大いに栄えたが、百年以上もの間、男人禁制だったことが…

年表

※プリニウス暦で表記。【パルテミラ周辺史】‐前207年 スパルタクスが大ローマ帝国の属州となる。‐前128年 セミラミス誕生。‐前113年 アドニス誕生。‐前103年 セミラミスが異民族との戦争で活躍。‐前101年 パルミュラ王国が大ローマ…

魔法・技一覧

【古代語魔法】‐|精霊の囁き《ウェスパーシ》 相手の心に直接語りかける魔法。精霊と語らうことでその力を借りる古代語魔法においては、最も基本となる魔法である。幼精と女精は生まれた時から体得している。極めれば詠唱せずに古代語魔法を発動することが…

登場人物詳細

※所属勢力は本編終了時点のもの。※能力評価はベテルギウスの主観による。百点満点。☆能力評価の見方武……武術による戦闘能力。知……知識量、知能の高さ、頭の回転の速さ。魔……魔法の多彩さ、熟練度、有用性。統……部隊指揮能力。魅……容姿の美しさ、…

エピローグ 蘇る帝国の記憶

 その後長い時を経て、パルテミラでは男女の融和が進み、女系の王朝は緩やかに消えていった。王朝が移り変わったあとも、テシオンは蒙句麗帝国に攻め落とされるその時まで、世界一輝かしい都市の一つであり続けた。 かつての栄華を偲ばせるものは、今はもう…

終章:そして英雄へ――

 考えてもみれば、無謀なことだった。 雷光騎兵は二百騎。対するナバタイ騎兵はまだ二千はいる。いくら相性がいいとは言え、十倍する敵の中に突っ込むなんて……ヴェルダアース隊のような精鋭ならともかく、女帝のお飾りにも等しかった雷光騎兵が、戦術的な…

第12章:セルキヤの戦い

「なによあれ!? 馬が空を飛んでいるの!?」 パルテミラの陣営から、次々に叫び声が上がる。「いや違うわ! だって鷹みたいな顔してるじゃない!」「馬鹿ね。あれはどう見ても鷲でしょ!? どちらにしても化け物ね……」 目を凝らしてよく見ると、それ…

第11章:護国の聖歌

 オレがその地下牢を訪れたのは、雷光祭から三日後のことだった。 牢内は薄暗かったが、ひんやりとした空気が心地よく、清掃も行き届いている。まだ暑さの残る地上に比べれば、むしろ快適なのではないかとすら思える。「また会ったな。アビソス・ズーマ」「…

第10章:雷光祭

 九月二十三日――雷光祭の日がやって来た。 まだ夏の暑さは残っていたが、うだるほどではない。時折吹く風が心地いい。 地上最速の競争が見れるとあって、テシオン郊外に設けられた会場には朝から多くの観客が集まっていた。競走に参加するジェロブとエミ…

第9章:宮廷図書館

 美しい庭園の中を、オレは歩いていた。 左を向けば色とりどりのラーレ(チューリップ)の花が咲き誇り、奥にはブドウ園、噴水も見える。右を向けば大理石の神殿が、陽光を反射して神々しい輝きを放っている。邪気にまみれたオレの目では、眩し過ぎて直視で…

第8章:嘆きの丘

 東の地平線が、かすかに明るみを帯び始めた。 薄白い光が、燃え移るように空に広がり、天空に舞う鳥の群れ、地上で跳ねる鹿――じゃなくて、霊羊《れいよう》の影を、くっきりと浮かび上がらせる。遠く南北に連なる山嶺は、万年雪に朝の光を反射させ、黄金…

第7章:亡国のアサシン

 最後にスレイナと会ったのは、事件の起きる三日前のこと。 演習場に呼ばれて、騎射を教えてもらったばかりだった。 馬が合うわけでもなく、鹿が合うわけでもなかったが、よき戦友になれるだろうと思っていた矢先の出来事。エクサトラから訃報を知らされた…