パルテミラ~砂漠の妖精帝国~

 

大ローマ帝国が最盛期を迎えていた時代。その西、砂漠を越えた先には、女系の帝国パルテミラがあった。男人禁制の帝都テシオンには、魔法から生まれた少年の姿の生命――幼精と女たちがともに暮らし、独特な文化を育んでいた。

ローマ属州スパルタクスの将軍――ベテルギウスは、将来を見込まれてパルテミラへの遠征軍に加わった。地中海で無敵を誇ったローマ軍の勝利は間違いないと思われたが……

異国に恋した将軍が綴る物語――神秘と哀愁漂うオリエンタル・ファンタジー

 

第8章 嘆きの丘

 東の地平線が、かすかに明るみを帯び始めた。 薄白い光が、燃え移るように空に広がり、天空に舞う鳥の群れ、地上で跳ねる鹿――じゃなくて、霊羊《れいよう》の影を、くっきりと浮かび上がらせる。遠く南北に連なる山嶺は、万年雪に朝の光を反射させ、黄金…

第7章:亡国のアサシン

 最後にスレイナと会ったのは、事件の起きる三日前のこと。 演習場に呼ばれて、騎射を教えてもらったばかりだった。 馬が合うわけでもなく、鹿が合うわけでもなかったが、よき戦友になれるだろうと思っていた矢先の出来事。エクサトラから訃報を知らされた…

第6章:知恵と芸術の都テシオン

  テシオンは豊かで美しい、夢の都だった。 街にはトラキヤ風の建物が立ち並び、行き交う人々は、髪色、顔形も様々。共通の特徴と言えば、月や星の模様が入った絹服くらいなものだ。それもオレたち西側の人間からすれば、ほんの一握りの上流階級にしか手に…

第5章:御前試合

 夢を見ていた。 オレは体中傷だらけで、テシオンの市街を逃げ回っている。 そのあとを、スレイナが鞭を振り回しながら、エミールが罵声を浴びせながら、おばさんが林檎を投げつけながら、どこまでも追ってくる。「もう一発打たせろ、この被虐趣味!」「消…

第4章:エミールとの邂逅

 荒野をひたすら南に進むと、エウフラーテス川に突き当たった。 そこから川に沿って、さらに行軍は続いた。 ローマ軍として渡河した時とはまた違った景色だが、この川の周りには豊かな大地が広がっている。起伏のある草原に、ポプラ、ギョリュウなどの低木…

第3章:妖精たちの饗宴

 意識が朦朧とする中で、優しく囁きかけるような、どこか懐かしくも感じられる歌声が、かすかに聴こえてきた。 何重にも重なり合った、透き通るような綺麗な高音。 オレはその歌声に身を委ね、しばらくの間、自分がどこでなにをしていたのかすら忘れていた…

第2章:カルデアの戦い

 荒野に響き渡る異国の笛の音。 鹿のような動物にまたがり、飛ぶように駆け回る女の騎士たち。 神々しさすら感じられる出で立ちだった。緑と純白に彩られた軍服が、陽光を受けて鮮やかに光り輝いている。パルテミラ帝国軍本隊のお出ましだ。 オレたちはそ…

第1章:砂漠のエルフ

  ――ベテルギウスの手記―― 銀砂を撒き散らしたような――満天の星空。 故郷と変わらぬ景色を眺めながら、オレはため息をついた。こうしている間だけは、ここが遠い異国の地であることを忘れられる。 本当に、とんでもない遠征に付き合わされたものだ…

プロローグ 幻の帝国パルテミラ

 *著者――ポカフォフ(プロセイン王国) プリニウス暦一一九八年。蒙句麗《もうぐり》帝国が、アルケサス朝の首都テシオンに侵攻した。 当時世界の四分の一を支配していた超大国が、史上最大規模の兵力で行った攻囲戦である。テシオンは二週間足らずで陥…

主要登場人物

【大ローマ帝国属州スパルタクス】☆ベテルギウス 主人公。スパルタクスの若き将軍。☆ソグナトゥス ベテルギウスの師。スパルタクス最強の戦士。【パルテミラ帝国】☆ゼノビア・パルテノス パルテミラの女帝。☆ヴェルダアース パルテミラ将軍。異称「美…