世界観

 戦国の後、幕府統治の下100年続いた平穏は突如終焉を迎える。
 きっかけとなったのは日ノ本一の山――宝永山ほうえいさんの大噴火。天高く噴き上げられた火山灰は広域にわたって日光を遮り、田畑に降り注ぎ、日ノ本に大飢饉をもたらした。
 だが噴火によって撒き散らされたのは火山灰だけではない。穢土えどへと通じていたのだろうか、火口から噴煙と共に現れたのは夥しい数の妖である。国中の猛者を集めた殲鬼隊せんきたいがこれを殲滅したかに思えたが、妖は人の心に棲み続けその勢力を強めることとなる。
 朝廷はこの混乱に乗じ、西洋の強国を後ろ盾に倒幕の兵を挙げた。
 後に宝永の乱と呼ばれる大乱の、幕開けである――

 

*  *  * 解説 *  *  *

 〜妖の遺した邪気が日ノ本を侵蝕〜
 物語の鍵を握るのは、噴火によって溢れ出した邪気である。邪気は妖から受けた傷から、食べ物から、空気から人々の体に取り込まれ、心を蝕んでいく。そのようにして理性が働かなくなった人々は侵蝕人しんしょくじんと呼ばれ、危険過ぎるため殺処分の対象とされてきた。

 〜鴉天狗からすてんぐ妖派あやかしは
 たとえ邪気に侵されていても、侵蝕人が人であることに変わりはない。妖や害獣のように殺されていく彼らの保護を始めたのが鴉天狗――かつて殲鬼隊の一隊長を務めていた、鵺丸ぬえまるが作った組織である。鴉天狗で育った主人公の影狼かげろうは、侵蝕人が人として生きる方法を追い求めることになる。
 一方、妖の力の軍事利用を進めるのが、妖派と呼ばれる幕府勢力の一派である。彼らは人為的な侵蝕により、妖の力を持つ兵――奇兵きへいを生み出すことに成功。戦士という、侵蝕人が人として生きる一つの道を示した。
 利害、理念の違いから、鴉天狗と妖派は対立していくことになる。そして両者が破局を迎えるところから、物語は始まる。

 〜妖刀と妖術〜
 妖怪の亡骸から作られた刀は妖刀と呼ばれる。妖怪の中には、妖術という特別な力を使う者もいるが、妖刀の使用により人も妖術を使うことが可能になる。ものによっては戦争の結果を左右する力を持つ、究極の兵器である。
 妖派の生み出した奇兵の中には、妖刀を使わずに妖術が使える者もいる。

 〜幕府勢力と朝廷勢力〜
 物語開始時点で、すでに幕府は滅亡している。幕府勢力と呼ばれているものの正体は、東国同盟とうごくどうめいという幕臣たちの集まりである。殲鬼隊で功績のあった人物や前時代からの有力大名が権勢を振るっている。
 対する朝廷勢力は、日ノ本西側の支配を固め、皇国こうこくと名乗るようになった。その軍事力を支えるのは、西洋の強国――プロセイン王国。彼らが日ノ本にやって来た目的は、未だ謎に包まれている。

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